【書評】神山健治の映画は撮ったことがない (神山健治)

書評

わたしは、
アニメ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」の大ファンです。
2002年に放送されたので17年経ちますが
今も好きなシーンは繰り返し観ているくらい。
特に、第2話「暴走の証明」と
最終話の笑い男と草薙素子とのラストの会話シーンが
衝撃とも言える感覚で今も色褪せません。

さて、
このアニメで監督を務めたのが著者となります。
こんな凄いアニメを作ったのは
どういう人なのか好奇心が止まりらず手にしたわけです。
そう、それが
「情報の並列化の果てに個を取り戻すための一つの可能性」
と思いながら。

下記にまとめました!

  1. 手にしたきっかけ
    ・著者のアニメのファンであるため

  2. 本の特徴
    ・主に考察を交えた上での経験談
    ・細かい章立てで32章(ボリュームはそこそこあり)

  3. 入手場所
    ・Amazon (Kindle)

  4. 読んで気づいたこと変わった事
    ・企画書とは何か
    ・構造の獲得とは何か
    ・「となりのトトロ」と「火垂るの墓」の魅力

  5. 総評
    ・タイトルからはわからないが、全クリエーターのための本。
     特に動画制作好きな人には必見。
     作成手法だけでなく、マネジメントなど
     組織として取り組む上でのノウハウなど
     非常に幅広い内容で書かれている。

 

 

企画書とは何か

わたしは、アニメを制作したことも
漫画を作ったことも制作現場に
触れたこともありません。
なので、
全くのど素人というか知らない状態です。

アニメーターの企画書があったのかと思ったくらいです。
(アニメーターの方には何かすいません。。。)

この企画書については、著者が20代のころ
そうとう苦労された経緯が書かれてます。
一生懸命作成した企画書が通らず
その場では無駄に終わることの失望感。
同じような経験は誰しもあるのと思います。
著者はそれでも諦めずに行動しつづけ、
出会い、そしてチャンスを得ることで
突破口を見つけ出すのです。
それは、
「必要な人間が必要なとき必要なだけ
 あつまらなければ企画は動かない」
と。

自分の中の企画はどんなに良くとも
環境が揃わないと動かないというのは
1人で考えて行動していると見えづらいものです。
組織として取り組むとなるとやはり
人間関係と環境があることが必然となります。

わたし個人としても、
自分なりに高い理想と構想を持って行動した結果
多くの失敗と反発が起きたのは環境を視野に入れずに
いたためでした。
「相手が何を求めているのか?」
「その環境に自分が何を企画できるか?」

そう考えることで
合致した意思が生まれ行動と結果に繋がると思います。



構造の獲得とは何か

ルパン三世で好きな映画は?
と聞かれると「カリオストロの城
と答える人が多いと思います。
わたしもその1人です。
やっぱラストに男のロマンと色気、
男の不器用さみたいなものが詰まってる
ように思いますので。

ここでいう「構造」とはなにか。
それは
構造なき脚本は単なるストーリーに過ぎない
こととなっており、
「構造」が無いと単なる物語だということ
単なる泥棒の物語では深みがないわけです。
でも、深みがあると引き込まれます。
なぜでしょう?
それは、観客にしかわからない
主人公の過去があったりすると
何気ない行動にも意味を感じ
愛着という親近感が生まれるです。
単に盗むのじゃない、
過去に理由があって盗むわけで
どういう思いで主人公が行動しているのかが
心に響くのです。

そういう設定を
構造」として組み込むことが
重要となってきます。

そういう意味で前者であげた
「カリオストロの城」が
分かりやすい展開ながら
深みがある内容
であり
多くの人に受け入れられている秘訣
ではないでしょうか。

また、「構造」の一部として
挙げられているのが
誤解」です。
これは
誤解による展開」であり、
先ほどの「過去」とは違い
リアルタイムに進行していきます。
観客としては「誤解」を知っている立場となります。
例えばスクリーンの中では悪とされている敵が
実は主人公の為の行為であったが何かしらの理由で
それを伏せている。
なので主人公は悪だと誤解し敵対する。
このようなストーリーです。
観客は事情を知っているので一喜一憂しつつ
いろんな感情を抱きながら見入ってしまいます。
これも単に正義と悪が戦うだけのストーリーなら
面白くないですが、こういった「構成」だと
深みが増すわけです。



「となりのトトロ」と「火垂るの墓」

どちらも観たことがある人は多いと思いますが、
実はこれが同時上映だったことを知っている人は
少ないのではないでしょうか?
最近は、「火垂るの墓」はあまり放映されなくなりましたよね。
なので有名な
「節子、それ○○やない。△△や」
だけネタがひとり歩きしている感じですが、
本編は戦争物にしては目を覆う描写もほとんどなく、
心に突き刺さる内容主体なので
ぜひ苦手な方も観ることをお勧めします。

さて、この2作品を例に著書では
とても確信的な話が書かれてました。
それは
「感情移入できる作品」と「感情移入できない作品」
についてです。

わたしも良く使いますが、
面白くなかった理由に
「感情移入できなかった」
と挙げます。
どうも主人公や世界観に馴染めずに
距離感が縮まらないまま
終わってしまったときに抱きます。
なので
「感情移入できない作品 = つまらない作品」
という定義でした。

しかし、この定義が著書で崩れました。
理由は下記です。

「となりのトトロ」は
すごく感情移入出来ますよね。
あの世界観は都会で育った子供も
どこか親しみや憧れそしてちょっと
不思議な怖さみたいなワクワクがあります。
すごく「感情移入できる作品」です。
「火垂るの墓」は感情移入できるでしょうか。
戦争に行きたいとも思わないので
あの世界観は触れたくありません。
それに主人公に身を重ねてハッピーエンドも期待できません。
つまり、「感情移入できない作品」なのです。

でも、つまらないかといえばそうではありません。
ともて心に残る作品です。
「火垂るの墓」のようなアプローチを「異化効果」と呼びます。
あえて、共感とは離れさせることで
観客は
「あぁ、わたしはあういう世界に生まれなくてよかった」
と距離感を抱かせることで
別の強い感情を与えることが出来るのです。
だから、共感しなくても心に強く残るわけです。

わたしはこの理由を知ったときに
評価概念が崩れ本を読む手が止まりました。

 

おわりに

著者のアニメに興味をもった経緯で
この本を手にしましたが、
アニメーターだけじゃなく
クリエーターすべてに参考になる本でした。
著者の分析力はズバ抜けており
1つの作品でも
「こういう捉え方をするのか」
と感心するばかりでした。

わたしは音楽を作る身ですが、
自分なりの解釈というものが
いかに大切であるかを痛感した次第です。

著者や作品を知らずとも読める内容となってます。
主に映画の考察となっているので映画全般に詳しい人は
より楽しめる内容となってます。


今回も読んでいただきありがとうございました。

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